第3部 生命

第2章 生物の進化(5)

目次
3. 脊椎動物の進化(3)
f. 鳥類
g. ほ乳類
h. 霊長類
用語と補足説明
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3.脊椎動物の進化(3)

f.鳥類

 鳥類が爬虫類から分岐したのは、ほ乳類が爬虫類から分岐したのよりもかなり遅いと思われる。有名な始祖鳥はジュラ紀(2億年前〜1億4600万年前)の後期の約1億5000万年前のものである。ただし、始祖鳥は現在の鳥の直接の祖先ではないともいわれている。始祖鳥にははっきりとして羽毛があった。羽毛はうろこが変化したものだと思われる。また始祖鳥の口には歯があり、前足(手)には爪があり、長い尾もある。まさに、鳥と爬虫類の中間型といえるものである。ただし、始祖鳥は現在の鳥類の直接的な祖先ではなく、系統のとぎれた絶滅種という考え方が主流のようだ。

始祖鳥の化石(ドイツ・バイエルン産)
http://www.ucmp.berkeley.edu/diapsids/birds/archaeopteryx.html
始祖鳥の復元想像図
http://www.nature.ca/notebooks/english/archaeo.htm

 最近では始祖鳥よりも古い時代の鳥類化石も報告されているが、きちんと確認されていないようである。

 始祖鳥よりも少し時代が下った白亜紀の初期(約1億2500万年前)の時代になると、中国の河北省から孔子鳥や中華鳥などのはっきりと鳥類とわかる化石がたくさん出てくる。

孔子鳥の化石
http://www.ngensis.com/ngb-81.htm
孔子鳥の復元図
http://www.ngensis.com/ngb-81.htm

 いずれにせよ、鳥類はほ乳類よりは起源が新しく、恐竜の中の獣脚類(ティラノザウルスなど)から進化してきたらしい。羽毛恐竜などの発見により、鳥類と恐竜の差は小さく、鳥類は絶滅を免れた恐竜、恐竜の生き残りといういい方をする人もいる。 

 また、ダチョウやエミューなどの大型の飛べない鳥(走鳥類)は、他の飛べる鳥とは起源が違うという考えもある。ダチョウとワニの肉を食べたことがある。確かに、ダチョウの肉の味は、いわゆる鳥の肉の味とは違い獣の感じがした。ワニの肉の方は、鳥の肉と区別がつかなかった。部位によっても違うのかもしれない。したに、爬虫類から鳥類・ほ乳類への進化の概念図を示す。なお、古生代−中生代の境界、中生代−新生代の境界、第三紀、第四紀という時代区分についてはこちらを参照


エンカルタ総合大百科2006をもとに作成。

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g.ほ乳類

 ほ乳類が爬虫類から別れたのは、鳥類よりも古い中生代の初期のころと考えられている。三畳紀(2億5100万年前〜2億年前)にいて、その後絶滅した獣弓類(上の図を参照、ほ乳類型爬虫類ともいう)という爬虫類がその祖先と考えられている。ジュラ紀には草食性、肉食性を含めてたくさんの種類のほ乳類が登場したが、単孔類や有袋類をのぞき、これらは中生代に絶滅した。

 単孔類(原獣類)は三畳紀から続いていると考えられるが、いい化石が見つかっていない。単孔類に属しているのは、現在ではカモノハシとハリモグラだけである。

 カモノハシは、タスマニアとオーストラリアの東部の水辺にだけ生息している。卵を産む、総排泄孔しかない(だから単孔類、肛門、尿道孔、生殖孔(膣)が一つになっている)、体温も不安定という動物であるが、腹部から分泌される乳で子供を育てる、体には毛があるなどという特徴も持っている。カモのくちばしのように見えるのは、鼻が伸びたものでありくちばしではない。カモノハシの写真はこちらも参照(24日と27日)。

 ハリモグラは、オーストラリア、タスマニア、ニューギニアに住んでいる。やはり卵生である。

カモノハシ
http://www.genevaschools.org/austinbg/class/gray/platypus/
ハリモグラ
http://www.calm.wa.gov.au/plants_animals/odd_echidna.html

 原獣類に対する、真獣類には、後獣類と正獣類がある。後獣類は白亜紀(1億4500万年前〜6550万年前)に登場する。

 現在の後獣類(後獣下綱)は有袋類(有袋目)だけである。胎盤が未発達で、子供は未成熟の状態で生まれる。その子どもは母親のおなかの育児嚢(いくじのう)の中に入り、そこで育てられる。

 有袋類は当初は優勢であったらしいが、現在では北アメリカに住んでいるオポッサムをのぞき、他にはオーストラリアとその周辺のにいるのみである。早くに地理的に隔離したオーストラリアには、正獣類(有胎盤類)が入り込まなかったので、有袋類の適応拡散が見られる。

 ※ オーストラリアやニュージーランドにいるのはポッサム

カンガルー
http://www.kangaroocenter.com/
コアラ
http://www.savethekoala.com/indexgallery.html

 正獣類(有胎盤類)のもっとも古い化石は白亜紀の地層から出てくるが、形は食虫類によく似ている。恐竜が滅んでのちの新生代(6500万年前〜現在)に入って、食虫類を祖先に、様々に適応拡散して、草食性のもの、それを食べる肉食性のもの、あるいは空を飛ぶもの(コウモリ目)、海に入ったもの(クジラ目)なども登場した。

ほ乳類の種類と系統:「マクロ進化と全生物の系統分類」(シリーズ進化学、岩波書店、2004年12月)p.78、p.81をもとに作成。
ほ乳類の系統分類は流動的であり、この図が確定した分類ではないことに注意。

 こうしたほ乳類の進化は大陸の分裂と移動と密接に関係している。かつて一つだった大陸(パンゲア大陸)は、2億年ほど前に北のローラシア大陸と南のゴンドワナ大陸に分裂する。ローラシア獣類はそのローラシア大陸起源の真獣類という意味である。また、それ以前から孤立していたオーストラリアでは、ほ乳類は独自の進化を遂げる。南のゴンドワナ大陸はさらに、アフリカ大陸と南米大陸に分裂する(アフリカ大陸が再びローラシア大陸と陸続きになるのは1800万年前)。これがアフリカ真獣類と南米獣類が分離した原因となる。なお、マダガスカルは1億6000万年ほど前にインドとともにアフリカから分裂し、8000万年前にインドとも分裂して、以後孤立した状態が続いている(インドは北上してユーラシア大陸と合体)。そのマダガスカルの動物の多くは新生代(6500万年から現在まで)になってアフリカから渡ってきたものが祖先になっているらしい。

ヒヨケザル、東南アジアに住んでいる。滑空するための皮膜が、首−前足−後足の間、後足−尾の間についている。コウモリの皮膜は前足−後足の間だけ。
http://www.americazoo.com/goto/index/mammals/dermoptera.htm
センザンコウ、アジア〜アフリカに住む。毛が変化した硬い鱗(うろこ)がある。アリを食べる。
http://www.americazoo.com/goto/index/mammals/pholidota.htm
ハイラックス。イワダヌキともいわれる。姿や習性はウサギに似ているが、蹄(ひづめ)がある。
http://www.americazoo.com/goto/index/mammals/hyracoidea.htm
ツチブタ、アフリカに住んでいる。穴を掘るのが得意。シロアリを食べる。
http://tolweb.org/tree?group=Tubulidentata

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h.霊長類

 霊長目(サル目)に属する動物。いわゆるサルの仲間。ヒトも含まれ、昔はヒトこそ進化の頂点であるという考えがあったので、霊長類という名を付けた。もちろん、現在生きているあらゆる生物は進化の結果現在の形になったのであり、ヒトだけが特別なわけでもない。

 霊長目を大きく分けると原猿類と真猿類になる。

 原猿類は樹上生活に適し、両眼でものを立体視できる。中にはマダガスカルに住むワオキツネザルのように、地上でクラスものもいる。アジアに住むロリスやメガネザルも原猿類の仲間である。だいたいがそれほど大きくはならない。マダガスカルは原猿類の宝庫で、体重200kgと推定されるゴリラ大の巨大な原猿類(パレオプロピテクス)が生存していた。ごく最近といってもいい18世紀まで、体重80kg程度にまでなるもの(メガラダビス)もいた。

 新世界サルは南アメリカの熱帯に住んでいるサルである。鼻孔の感覚が広いので広鼻猿ともいう。オマキザルなどがそれに属する。

 一方、旧世界サルはアフリカ、インド、東南アジア、日本に生息する。鼻孔の間隔が狭いので狭鼻猿ともいう。下の霊長目の系統図を参照。

原猿類

ワオキツネザル(輪尾狐猿)。キツネザルはLemurといい、アフリカにはいないがマダガスカルとコモロ諸島にいる。またマダガスカルからインドにいる。またその間の島々から化石が出る。これが昔インド洋にあったという想像上のの大陸「レムリア」の語源になった。
http://www.bbc.co.uk/nature/
wildfacts/factfiles/340.shtml
スローロリス。東南アジアに住んでいる。
http://www.americazoo.com/
goto/index/mammals/91.htm
サルには見えないが、日本人の多くがサルの仲間と知っているアイアイ。キツネザルの一種。小さい体(頭胴長さ50cm、体重3kg)なのに、手の指の長さはヒトの指ほどもある。中指が異常に細い。すべてかぎ爪で、果実を食べるのに適している。マダガスカルにいるが絶滅を危惧されている。
http://www.animalinfo.org/
species/primate/daubmada.htm#tidbits

 真猿類

新世界サルのオマキザル
http://www.kidszoo.com/
animals/capuchinmonkey.htm
旧世界サルのヒヒの仲間。
http://www.thebigzoo.com/
Animals/Hamadryas_Baboon.asp
テナガザルの仲間。テナガザルは東南アジアに住んでいる。長い手で上手に木々を渡っていく。
http://www.gibboncenter.org/
オランウータン。森のヒトの意味。東南アジアのカリマンタン(ボルネオ)とスマトラの熱帯雨林にすむ。単独生活をしているが、生態はよくわかっていない。絶滅を危惧されている。
http://www.savetheorangutan.info/
ndex2.php?id=241
ゴリラ。アフリカ中央部にすんでいる。最大で頭胴長1.6m、体重180kgに達する。年取った大人の雄は背中が白い、シルバーバックとなる。生息環境の悪化、密猟により、絶滅を危惧されている。
http://www.seaworld.org/
animal-info/info-books/gorilla/
チンパンジーの一種、ボノボ。そもそも遺伝子の99%がヒトと一致するというチンパンジーの中でも、ボノボは最もヒトに近いという。チンパンジーの体長1.5m、体重50kgに対し、ボノボは小型で体重も30kg程度。雌雄間だけでなく、同性間でも性行為をコミュニケーションの手段にしている。
http://williamcalvin.com/teaching/bonobo.htm

 

霊長目の種類と系統:「マクロ進化と全生物の系統分類」(シリーズ進化学、岩波書店、2004年12月)p.88をもとに作成。
分岐した年代は分子系統学からの推定。

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用語と補足説明

鳥類ほ乳類と同じように恒温動物で、心臓も二心房二心室である。二本足歩行で前足は翼になっている。すべて卵生(硬い殻)で、雌雄のつがいで子育てするものが多い。羽毛を持ち、さらに飛行能力を持っているものも多い。

走鳥類走鳥類の中には、地球の歴史の長さを考えるとごく最近といっていい数百年前に絶滅したものもいる。一つはマダガスカル島に住んでいたエピオルニス、もう一つがニュージーランドに住んでいたモアである。

 エピオルニスは頭高2.4m〜2.7m、体重450kgもあり、一番重い鳥類でもあった。16世紀ころまでは生存していたらしい。アラビアの船乗りに伝えられて、シンドバッドの冒険に出てくるゾウをつかんで飛び上がることができたというルフ鳥(ロック鳥)のモデルになったという。マルコ・ポーロはバナナの葉を見せられ、これがルフ鳥の羽であるといわれ、信じてしまったらしい。

 モアは頭高は、最大のもの(20種くらいいたらしい)で4m。翼は痕跡もない。1769年にクック船長がニュージーランドを訪れたときには、すでに個体数が激減して、絶滅していた種もあったという。しかし、ごく一部は19世紀初頭までは生き残っていたらしい。

モアの足の骨、巨大さがわかる。
http://www.duke.edu/~mrd6/moa/gallery.html
モアの復元図
http://www.amnh.org/nationalcenter/Endangered/zealand/zealand.html

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ほ乳類ほ乳類(哺乳類)は、乳腺から出る乳で子供を育てる脊椎動物である。恒温動物でもある。

食虫類ほ乳類の中の一グループ。ネズミやモグラなどの小型のほ乳類。昆虫だけでなく、ミミズや植物なども食べる。ヒトのその一員である霊長類も食虫類から別れたらしい。

適応拡散一つの祖先が多様な環境に適応して様々な形態に進化して、、いろいろな生態的な地位を占めるようになること。厳密な用語ではないが、状況を説明している。オーストラリアにおける有袋類の中には、旧大陸のネズミ、モグラ、モモンガ、リス、アナグマ、オオカミなどに相当する種が生まれた。正獣類(有胎盤類)にも、かつての恐竜魚竜鰭竜翼竜に相当する種がある。

タスマニアオオカミタスマニアタイガーともいう。オーストラリアやタスマニアにいた肉食の動物。ライオン、トラ、オオカミと同じ生態的な地位を占めていた。ヨーロッパ人の入植が始まると、羊を襲う動物として駆除された結果、1933年にタスマニアの動物園で飼育されていた個体を最後に(目撃談はあるが)絶滅したと考えられている。

タスマニアオオカミ、トラのような縞模様、オオカミのような体型をした肉食の有袋類。
http://www.dpiwe.tas.gov.au/inter.nsf/WebPages/BHAN-53777B?open
タスマニアオオカミの剥製。オーストラリア・パースの西オーストラリア博物館。2007年8月26日撮影。

マルコ・ポーロマルコポーロ(イタリア、1254年?〜1324年)は、イタリアのベネツィアで東方貿易をやっていた父と叔父に連れられ、当時中国を支配し元という帝国の皇帝になっていたフビライを大都(北京)に訪ねた。フビライに気に入られたマルコ・ポーロはしばらく彼につかえた後帰国する。1271年に出発し、帰国したのは1295年である。帰国した後、ジェノバとの戦争で捕虜になった彼は、獄中で体験談を同房のルスケチロに語った。ルスケチロはそれを「東方見聞録」という名で出版した。

 「東方見聞録」では、日本(ジパング)は黄金の国として紹介されている。この黄金を求めることを動機に、コロンブス(イタリア、1451年〜1506年)の西回りでのインド到達の挑戦(アメリカ(西インド諸島)への到達)、バスコ・ダ・ガマ(ポルトガル、1469年?〜1524年)の喜望峰まわりルートの開拓などがなされたという。

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岐阜大学教育学部地学教室全地球史:http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/e-history/html_/eh/index.html

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