地質学者のように考える マーシャ・ビョーネルード 江口まとか訳 築地書館 ISBN978-4-8067-1693-8 2,700円 2025年11月

 筆者は「時間」の認識、つまり数万年、数百万年、数千万年、数億年どころか、地球史−宇宙史の100億年以上の長いスパンの時間を捉えることの重要性を強く訴えている。それにはもちろんそうだが、もう一つ、空間の広がりも強調したい。数cm、数m、数km、数au(天文単位)、数光年という広がり。つまり、日常的に体験できる時間と空間ばかりではなく、もっと長い時間ともと大きな空間の中の自分という認識。

 アメリカの教育界・科学界の中の地質学(地球科学)の扱いが、日本とまったく同じことにも驚き、彼女の嘆きに共感する。高校までもまともな理科(科学)の科目ではないし、大学でも、進級のための必修単位として、(あまり興味はないけど)仕方なく受講せざるを得ない講義。物理(学者たち)からは、ワンランク下の科学と思われ、物理に隷属するものという扱い(物理帝国主義)。

 近代科学が成功したのは、自然界の現象を「実験室」という小さな空間に押し込み、そして実際に観測できる短い時間に切り取って、現象を単純な因果関係に還元するということをやってきたからだと思う。だから、これからはみ出すことを扱うのは苦手。例えばこの本にもあるように、海のプランクトンを増やすには、ボトルネックになっている元素である鉄を撒けばいいという単純な発想。撒けばどうなるか、他にどういう影響が出るのか出ないのかを総合的に考えないという、とても危険な思考。

 筆者の政治的な希望は、未来の人類のことを考えるための「未来省」をつくり、それから逆思考して今日何をすればいいのかを政策として実行するということらしい。この本のアメリカでの出版は2018年、つまりトランプ第1次政権下(2017年〜2021年)のもの。第2次政権下ではどうなのだろう。ちょっと絶望的になっていると思う。

 個人的には、未来に対してはあくまでも謙虚な姿勢、つまり我々はまだ自然界のことはよくわかっていないという姿勢が大切だと思っている。そういう意味では最近のIPCCのレポートよりも、第3次レポートの「いずれにせよ後悔しない対策」という控えめな提言の方が、自分としてはしっくりくる。

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2025年12月

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