第四間氷期 安部公房 昭和45年(1967年)11月(平成31年(2019年)1月題45刷) 新潮文庫 ISBN978-4-10-112105-5 710円+税 昭和45年(1967年)11月(平成31年(2019年)1月45刷) ※ 昭和33年(1958年)7月〜昭和34年(1959年)3月岩波「世界」に連載、1959年単行本を文庫化したもの。
冷戦時代、まだソ連がそれなりに世界に影響を与えていた時代、“共産主義”に希望を持っていた人もいた時代という背景。安部公房自身も1950年ころから共産党員。ただし、1962年に除名される。党中央を批判したためらしいが、詳細は知りません。この本はだから党員時代ということになる。
ソ連が開発した「予言機械」(大型計算機を活用、いまでいうAI)、単純な自然現象を予言するだけから始まり正確な天気予報、次に経済の予測も始めたモスクワ1号、さらには人類の社会の未来は“共産主義”と予言するモスクワ2号も稼働開始。
日本でもそれに対抗すべく予言機械の開発が行われる。中心は勝見博士、助手にョ木、政府委員友安、開発チームの1員和田勝子など。ただ、社会・経済・政治などの予言は、その予言が共産主義到来となっても困るので、それとは関係ないと思われる題材を探すことになる。
社会・経済・政治、さらに個人のことなどの人が絡んでいる未来の予言は、予言を公表したことにより人の行動が変わる、これを読み込んで2次予言、さらにこれによる行動変化を読み込んだ3次予言……、無限まで持って行き、第1次予言との中間をとるというものらしい。
結局、勝見博士たちのチームは、政治・経済とは無関係そうなまったくの個人、いかにも平凡そうな中年男性を見つけ、彼の未来を予測しようとする。彼のデータを集めるために勝見博士とョ木が尾行を始めたとたん彼が殺害されてしまうという事件が起こる。ということで、勝見博士たちは否応なしに不可思議な事件に巻き込まれていく。だが裏では大変な事態が進行中。
これ以上書くとネタバレになりそう。
まだ大型計算機すら珍しい時代、いまのAIを先取りしたような発想。ひたすらデータを入力すると、だんだん“思考”らしき出力が出てくる。機械学習の思想。安部公房の慧眼が光る。
この小説は高校生のころに読んだ(がほとんど忘れていた)。AIを予測したような本だったと思い、読み直した。
当時のSFマガジン編集長福島正実はSFでも“純文学”となりうるとして(当時は“純文学”と“大衆文学”があり、“純文学”の方が高等とみなされていた?
福島正実は純文学コンプレックスがあったようだ)、その例としてこの「第四間氷期」を挙げていた。ということで読んだ記憶がある(つまり自分はSFマガジンの読者だった)。福島正実はさらに、安部公房に必死に働きかけ、その結果がSFマガジンに連載された「人間そっくり」だったはず。福島正実の劣等感の結晶が「人間そっくり」だったかもしれない。この小説はあまりSFっぽくないけど。
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2025年12月