ダーウィンの進化論はどこまで正しいのか? 河田雅圭 光文社新書 ISBN978-4-334-10292-0 1,000円+税 2024年4月(2024年10月2刷)

 ダーウィンの進化論をさまざまな角度で検討する。生命とは何かという問いはそもそも難しいし(※)、進化論で出てくる「種」という概念だって難しい。

※ 日本の科学者は生命の特徴について、膜で囲まれて内と外がある、代謝する、子孫を残すという3つの特徴を挙げる人が多いが、欧米だとさらに、熱力学的非平衡な状態を保つ、自己と他者を区別する、ダーウィン進化をするの3つが加わることが多いようだ。最後がたんなる“進化”ではなく、わざわざ“ダーウィン進化’とするところが味噌だと思う。

 この本では、目次にあるような疑問を詳細に検討していく。その中で多様性については単純に多ければいいというものではないことも説明する。また、ドーキンスの「利己的遺伝子」、自民党広報誌に登場した“もやウィン”の「唯一生き残ることができるのは、変化できる者」、さらには「種の保存こそが生命の最大の目的」とする福岡伸一氏も遡上に載せる。

 用語としては“アレル”がよく使われている。抽象的だった“対立遺伝子”を、DNA上の具体的な場所に位置する対立遺伝子というような意味らしい。

 全体としては、これまでのところダーウィン進化論を根本的に否定するようなものは出ていないと、読むことができると思う。それにつけても、遺伝の仕組みがわかったいなかった時代、ダーウィンの慧眼には驚かされる。

 じつは筆者の河田雅圭氏は、氏初めての一般向け解説本「初めての進化論」(講談社現代新書 、1990年1月)で知った。それ以来の一般向けの本だという。「はじめての進化論」について、当時(1990年1月)生意気にも、「『はじめての進化論』は、進化論についての入門書であり、よくまとまっている。そして最後の「社会の中の進化論」という章は、上に書いたような問題を別な形で書いている。とくに「中立説」で遺伝学の世界的権威である木村資生の「優生論」批判、またいわゆる京大学派というインテリゲンツァの一群の頭目である今西錦司の「すみわけ進化論」批判は(今回の本でも福岡伸一進化論を今西の亜流と批判)、重大な問題を提起したと考える。若い筆者がこれらをさらに発展させることを期待しよう。」と書いていた。1958年生まれ、当時は若手だった筆者ももう老大家(?)、ときが経ってしまった。こちらはもっと歳をとってしまった。

目次
はじめに(各章の終わりに章のまとめが出ている)
第1章 進化とは何か
第2章 変異・多様性とは何か
第3章 自然選択とは何か
第4章 種・大進化とは何か
おわりに
参考文献一覧

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2025年6月記

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