幻のネズミ、消えたY 黒岩麻里 岩波科学ライブラリー ISBN978-4-00-029377-0 1,600円+税 2025年9月
沖縄にはオキナワトゲネズミ、奄美大島にはアマミトゲネズム、徳之島にはトクノシマトゲネズミという近縁種がいて(どれも絶滅危惧種)、そのうちのアマミトゲネズミとトクノシマトゲネズミはY染色体を失っているという。アマミトゲネズミとトクノシマトゲネズミは、Y染色体はないが雄はいるという不思議な哺乳類。つまり性決定因子がY染色体上ではなくなっている。
そもそも、Y染色体はX染色体よりもかなり小さく、人類などでは今でも小さくなり続けているという。だから、このままでは男性がいなくなる、つまり人類存亡危機に瀕しているという説もあるくらい。でも、生命の進化にとって「性」が重要ならば、Y染色体がなくなっても何らかの方法で雄の存在は継続するはず。それを示すのが、アマミトゲネズミとトクノシマトゲネズミなのかもしれない。
一方、一時は絶滅も心配されたオキナワトゲネズモはY染色体はあるが、染色体数がアマミトゲネズミやトクノシマトゲネズミの半分、その代わり一つ一つの大きさが倍になっているという、これまた不思議な存在であることがわかったという。
この本ではこうした「成果」ばかりではなく、研究上の、また予算獲得上での失敗の話しや、子育ての話しなど、これから研究職を目指す人にはよい体験談だと思う。
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2025年12月