オッペンハイマーの遺産 佐藤文隆 青土社 ISBN978-4-7917-7710-5 2,400円 2025年5月

 オッペンハイマーの伝記ではなく、オッペンハイマーが絡んだ仕事、中間子、原爆、ブラックホール・中性子星などについて、当時それらに関わった科学者たちとのかかわり・関係について書いてある。なかには、筆者自身の実体験、彼らとの会話もあり非常に興味深い。

 その一つ。ホイラー(1911年〜2008年)も出てくる。彼自身に対し直接水爆が爆発したところ見たことがあるかという質問をしたという(1994年)。すでに若手科学者たちの話について行けなくなっていた老ホイラーは喜々としてその話をしたという。この辺の感覚は、原水爆開発に絡んだ多くの科学者の姿かもしれない。

目次
第1章 核兵器現状の一断面 老化する核弾頭
第2章 核兵器の公然かとビキニ事件 湯川の高知訪問と生涯の天気
第3章 原子爆弾と日本復興 仁科芳雄と永井隆
第4章 オッペンハイマーという選択 米国物理学会の興隆
第5章 湯川のオッペンハイマーとの初邂逅 1939年のUCバークレー
第6章 核分裂発見から科学戦時動員まで 英国の熱気が米国に
第7章 オッペンハイマーの登場と日米開戦 カリフォルニアの二人
第8章 左傾化のアメリカとオッペンハイマー ニューディールとスペイン内戦
第9章 原子爆弾完成後の去就をめぐって ボーアの「科学者共同体」
第10章 ある原爆科学者の生涯 フィリップ・モリソンの場合
第11章 ある水爆科学者の多彩な研究人生 ジョン・ホイラーの場合
第12章 核兵器廃絶に向けた言説 平和・軍縮・被爆
あとがき

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2025年6月記

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