20世紀学術論文集プレート・テクトニクス革命 木村学編 岩波文庫 ISBN978-4-00-3395771-4 1,050円+税 2025年8月
“プレート”・テクトニクスの“プレート”の概念は1967年ころマッケンジー(1942〜、イギリス)、モルガン(1935〜2023、アメリカ)、ル・ピション(1937〜2023、フランス)たちによって確立されていった。ただ、この本では解説にル・ピションの名は出てくるが、論文は載っていない。
この本で取り上げられた論文は、今となっては煩雑で論点がよくわからないものも多い。なので飛ばし読みした。当時は三重点が重要だったようだ。繰り返し議論されている。
全体として、プレート・テクトニクスへはウェゲナーの大陸移動説(1915年) → 頓挫(1930年ころ〜) → 海底データの蓄積(1950年代〜、海底地形、堆積物の厚さ、海洋底岩石の年齢、地殻熱流量、海底岩盤古地磁気(地磁気異常)など) → 海洋底拡大説(1962年ころヘスやディーツ) → ヴァインとマシューズのテープレコーダーモデル(1963年) → トランスフォーム断層(1965年ウィルソン、ウィルソンはさらにホットスポット、ウィルソン・サイクルも提唱)という前段を踏んで、“プレート”の概念に至ったのだと思う。
そのプレート(境界以外ではほとんど変形しない剛体として扱える球殻の一部(断片))の、地球という球面上での運動は、オイラーの定理(球殻の運動は地球の中心を通る軸の回りの回転となる)に従ってるはず、これがポイントだと思う。
これが一番よくわかるのが、中央海嶺の中軸谷がずれている部分(断裂帯)の動きの解明。この本ではモルガンの論文の中の概念図(p.204)が揚げられている。当時はまだプレートの動きの速さは、古地磁気などから推定していた時代。ただ、これをきちんと実証するためには、地震学の進歩が必要だった。中央海嶺という大陸から離れた海洋の真ん中、つまり陸地に設置された地震計から遠い海嶺付近の地震をきちんと観測して、そこで起こる地震の震源断層の動きの解析が必要になる。
これが可能になってきたのは、地震とは何かがきちんとわかったこと(1963年)、さらに1960年代半ば以降、アメリカを中心としてきちんとした規格で作られた地震計が世界中に設置されたこと(目的はソ連の地下核実験の監視)という背景がある。
これにより、断裂帯で起きている地震はウィルソンが唱えたようにトランスフォーム断層であること(震源断層の動きの向きがわかった)、さらにその動きの量(地震のたびにどのくらいずれるのかがわかった=プレートの移動の速さがわかった)、つまりオイラーの定理どおりにプレートが動いていることが実証できた、これが肝だと思う。この本の解説では、ここがあまりきちんと説明されていない。
つまりプレートが実在のもであるという観測上のポイントは、プレートの動きがその回転軸の回りの回転になっていること、そしてその速さは回転軸と地表の交点を極(緯度90°)とすると、緯度のコサインに比例するということになる。これが、地震のデータから実証できるようになったのが1960年代後半。これが大切なはずなのに、この本ではこの辺が曖昧だ。
あと、プレート・テクトニクスの概念の確立に対して、日本の科学者の貢献はあったのかというと、この本で紹介されている論文には日本の学者の論文の引用はない。つまり、貢献はなかったということになる。
※ 1966年宇津徳治論文「異常震域現象主マントル上部の地震波吸収の地域性.」が今から振り返ると”プレート”をいっていたが、日本語論文。
ただ、最後の「造山運動」については、都城秋穂、杉村新、松田時彦など日本の学者の論文も多数引用されている。
※ 学生のころ、イギリスから戻った研究者が「マッケンジーって双曲線関数も知らないんだぜ。」といっていた。でも、双曲線関数を知らなくたって、プレートの概念を提出できたと思った。
※ トランスフォーム断層
中軸谷がずれているところの断層。通常の横ずれ断層は断層の端は曖昧、トランスフォーム断層は断層の端が中軸谷になる(トランスフォームする)。動きも中軸谷のずれとは逆(中軸谷が拡大軸であるということ)。
※ 最後の2枚の図は瀬野徹三氏(東大)
https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/KOHO/KOHO/backnumber/14/14-1.html?fbclid=IwY2xjawOXid1leHRuA2FlbQIxMABicmlkETF0aDBhOHVPOTFuQmttRFRkc3J0YwZhcHBfaWQQMjIyMDM5MTc4ODIwMDg5MgABHlyPtQtmLa-zwyx2X71qUMJiQ9Vh5g-qRqMxP83kVHPFYFyfoCWcNrzYQvL9_aem_B50Aap8BNztY6COhmbdCTw
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2025年11月記