2 資源

 地球は有限なので、当然資源も有限である。このまま消費を続けていると、そのうちなくなってしまうのではないだろうか。

2・2 水資源

 ヒトに水は欠かせない。生物としてまず水が必要だし、生活用水、工業用水、農業用水としても必要である。だが、世界的には水の供給に悩んでいる地域も多い。降雨量はどうしても季節に偏りがある。だから年間を通じて有効に利用しようとすれば、ダムを造って水を貯めておかなくてはならない。しかし、巨大ダム建設にはいろいろな問題がつきまとう(6・4参照)。

 地下水の利用も限られる。深い井戸を掘れば、まわりの浅い井戸が枯れる恐れがある。だいたい地下水として蓄えられている水はそれほど多くはない。また、日本の平野(沖積平野)で大量に地下水を汲み上げると、地盤沈下が起こる可能性がある。そのために、東京や大阪などでは、地下水の利用には制限が設けられている。

 海水を真水に変えるには、莫大な経費がかかる。アラブの一部の産油国が大々的にやっているが、石油が枯渇したら、つまり石油を売ることができなくなったらどうなるのであろう。

 日本は降水量の多い国といわれる。「日本の水資源について」(国土交通省平成25年版http://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_fr2_000004.html)によると、日本の降水量は1690mmで、世界平均の810mmのほぼ2倍である。しかし、1人あたりの降水量(降水量×国土面積÷人口)とすると5000m3/人・年で、世界の平均16000m3/人・年の1/3程度でしかない。また、さらに蒸発量を除いた水資源賦存量(理論上の最大利用可能量)にすると、3223m3/人・年になってしまう。下図でエジプトは、1人あたりの降水量(620m3/人・年)は非常に少ないように見えるが、エジプトには水源が国外にある大河ナイルが流れているので、単純な比較はできない。


国土交通省日本の水資源について(平成25年(2013年)版)http://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_fr2_000004.html

 さらに世界の水の使用量を見てみると、日本は1856L/人・日で、世界平均(1756L/人・日)やヨーロッパ(1985L/人・日)、アジア(1714L/人・日)とほぼ同等、北アメリカ(3924L/人・日)の半分以下、逆に北アフリカ(593L/人・日)の約3倍という値である。ただし日本は、食糧自給率が約40%でしかない。これは農地を外国に持っている、つまり農業用水(日本だけでは1226L/人・日)は外国のものを使っている(バーチャルウォーター(仮想水))ということを考えなくてはならない。単純にこれを加算(1226L/人・日÷0.4にする)すると、日本の水使用量は3695L/人・年となり、北アメリカと同等であるともいえる。


図で見る環境白書(平成22版)http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/zu/h22/index.html

  また日本の、とくに太平洋側の降水は梅雨と台風によって、年間の降雨量の1/3から1/2がまかなわれている。しかも地形が急峻なので、降った雨はせいぜい数日で海に流れ出してしまう。必然的にダムを造って水を利用しなくてはならないが、すでに主な川の上流にはダムが造られてしまって、これ以上に大きなダムを増やすことは非常に難しい。関東地方では、相模川の支流、宮ヶ瀬にできたダムが最後の巨大ダムといわれている(1999年竣工、写真は図2-5)。巨大ダム建設にはいろいろな問題が伴う

 ただ日本は、ダムの数は上記の国土交通省白書「日本の水資源」によると2784(高さ15m以上)もあるが、一人当たりの貯水量73m3であり、これはロシア5455m3、アメリカ3384m3、ブラジル3336m3よりはるかに少なく、中国392m3よりもかなり少なく、インド189m3、フランス186m3、イタリア116m3よりも少ない。かろうじてイギリス70m3、ドイツ20m3を上回っている程度である。日本の地形の特徴から、巨大なダムを建設しても、貯水量はそれほど多くはならないということがわかる。


図2-5 宮ヶ瀬ダム(2007年2月4日撮影)

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