第二部−2− 地球の科学

第10章 堆積岩と地層(1)

目次
1. 風化・侵食・運搬・堆積(1)
a. 風化
a−1 物理的風化
a−2 化学的風化
用語と補足説明
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1.風化・侵食・運搬・堆積(1)

a.風化

 地表に露出している岩石は風雨にさらされだんだんぼろぼろになっていく。この過程を風化という。

a−1 物理的風化

 岩石を構成している鉱物によって熱膨張率が違うので、温度変化によってだんだん鉱物同士がバラバラになっていく。たとえば花こう岩はそれをつくっている黒雲母、長石(斜長石、カリ長石)、石英の粗粒がこうしてバラバラになっていく。その中で石英以外の鉱物はさらに化学的な風化によりもっと細かくなったり、あるいは水に溶けて流れ去り、石英の粒だけが残ることが多い。こうした砂をマサ(真砂)という。また割れ目があれば、その割れ目にしみこんだ水が凍るときに膨張するので、だんだん割れ目が広がっていく。こうしたことによっても、岩石はバラバラになっていく。

a−2 化学的風化

 水に溶けたり、水によって分解されたり(加水分解)、酸素によって酸化されたりなどによっても岩石・鉱物は風化されていく。

 たとえば石灰岩(主要構成鉱物は方解石CaCO3)は二酸化炭素を溶かし込んだ水(雨水は大気中の二酸化炭素を溶かし込んでいる)と反応する。

 CaCO + HO + CO2 → Ca(HCO)2(炭酸水素カルシウム=水に溶ける)

 こうして、石灰岩地帯では鍾乳洞やカルスト地形というものができていく。石灰岩と二酸化炭素の関係は地球環境の安定性に重要な役割を果たしている。

 また熱帯や亜熱帯では雨水により溶けやすいものが流されて、水に溶けにくいアルミニウム(Al)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ケイ素(Si)などが表土に残る。この中でアルミニウム(酸化アルミニウム)の割合が多い土をボーキサイトといい、アルミニウムの鉱石となる。そもそもアルミニウムはふつうの岩石にもたくさん含まれているが、こうしたものから取り出そうとすると採算がとれない。鉱石となるボーキサイトは酸化アルミニウムを50〜60%も含んでいる。

 またラテライト(紅土)はも同じようなものであり、鉄の含有量が多いものであるが、これは鉄鉱石としては利用されていない。ただしキューバやニューカレドニアのラテライトはニッケル(Ni)の含有量が多く、これは鉱石として利用される。

 長石や黒雲母は化学的な風化により、カオリナイトという粘土鉱物に変化する。カオリナイトは陶磁器の原料となる。鉄(Fe)やマグネシウム(Mg)に富む鉱物は、モンモリロナイトという粘土鉱物に変化する。

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用語と補足説明

鍾乳洞日本で最長の鍾乳洞は岩手県の安家洞(あっかどう)であり、全長は12kmを超えるといわれている。アメリカのケンタッキー州にあるマンモス洞は全長560km(360km程度という説もある)を超えるともいわれいている。これが本当だとすると、まっすぐ伸ばせば東京−岡山程度ということになる。縦穴ではフランスのジャン・ベルナール洞が−1455mという。日本にも深さ450mという新潟県の百連洞がある。

 鍾乳洞内には鍾乳石、石筍などが見られる。これらは、一度石灰岩(方解石)が溶けたものが再結晶してできたものである。

上から垂れる鍾乳石と下の石筍。福島県のあぶくま洞。2002年8月撮影。 巨大な石柱(鍾乳石と石筍がつながったもの)。あぶくま洞。

 こうした巨大な鍾乳洞は石灰岩地帯にできる。その地表ではカルスト地形と呼ばれるものができる。ドリーネというすり鉢状の窪地や、白っぽい石灰岩塊が羊の群れのように見えるカレンフェルトなどが見られる。

鉱物の風化主要鉱物の中では石英はもっとも風化に対する抵抗力が強い。そこで上に書いたように花こう岩地帯では、石英だけが残って白い砂(マサ)の山となる。北アルプスの燕岳などが代表である。また、いわゆる白砂青松の白い砂浜も石英である。有色鉱物では、晶出の順に風化に対して弱い。つまり、かんらん石がもっとも弱く、輝石、角閃石、黒雲母の順に強くなる。

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炭素循環大気中の二酸化炭素(CO2)は、地球上の炭素循環に規定されている。

 CaSiO3 + 2CO2 + H2O → Ca2+ + 2HCO3- + SiO2 … (1) (ケイ酸塩鉱物の風化作用)
 CaCO3 + CO2 + H2O → Ca2+ + 2HCO3-  …(2) (炭酸塩鉱物の風化作用)

 Ca2+ + 2HCO3- → CaCO3 + CO2 + H2O …(3) (炭酸塩の沈殿)

 (2)式+(3)式だけでは、風化で1molのCO2が消費され、炭酸塩の沈殿で1molのCO2が生じる。つまり、大気中のCO2の増減はない。しかし、(1)式+(3)式では

 CaSiO3 + CO2 → CaCO3 + SiO2

となり、大気中の二酸化炭素(CO2)が正味で取り除かれる。つまり、化学的風化により大気中の二酸化炭素が除去されていく。これだけでは大気中のCO2は短時間で取り除かれてしまうことになる。しかし、海洋底に堆積した炭酸塩鉱物(CaCO3)は、プレート運動によって(プレートの沈み込みによって)地下深くに持ち込まれると、高圧高温下で変成作用を受け下のようになる。

 CaCO3 + SiO2 → CaSiO3 +CO2

このCO2が、島弧の火成活動で火山ガスとして出てくる。

 このバランスで地球大気の二酸化炭素の濃度(量)が決まる。例えば、地球全体の火山活動が活発になり、大気中の二酸化炭素が増えて温室効果が強まると、地球の気温が上がる。気温が上がると化学的風化が促進され、その結果大気中の二酸化炭素が除去されていく。

 (3)式から、サンゴ(サンゴ礁)が炭酸塩を固定するときに二酸化炭素を放出していることがわかる。だから、サンゴ礁の保護は二酸化炭素の増大を招くという意見もある。ただし、サンゴが炭酸塩を生産するときに必要な炭酸イオンは岩石の風化によってつくられる。サンゴ礁だけを見ればサンゴ礁は二酸化炭素を発生しているが、陸−海全体を見ると(ケイ酸塩鉱物までを考えると)、二酸化炭素は消費されている。地球史全体を見れば、こうしてできた石灰岩(方解石CaCO3)が地殻に炭素を、ひいては二酸化炭素を固定していったと考えられる。大気中の二酸化炭素の減少の推定例はこちらを参照

 もちろん生命発生後(光合成を行う植物発生後)は、光合成による大気からの二酸化炭素の除去(有機物としての固定)と、生物の死骸の腐敗(二酸化炭素を発生)のバランス、人類の活動による二酸化炭素発生の問題など、すべてをきちんと考えなくてはならないので、そう単純ではない。こうしたことも考えた炭素循環についてはこちらも参照

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