第3部 生命

第2章 生物の進化(3)

目次
3. 脊椎動物の進化(1)
a. 脊椎(せきつい)
b. 原索動物(げんさくどうぶつ)
c. 魚類
c−1 無顎類(むがくるい)
c−2 板皮類(ばんぴるい)
c−3 棘魚類(きょくぎょるい)
c−4 軟骨魚類
c−5 硬骨魚類
用語と補足説明
このページの参考になるサイト

3.脊椎動物の進化(1)

a.脊椎(せきつい)

 ヒトもその一員である脊椎動物は、背中に脊椎(せきつい)という骨が通っていて、体を支えている。脊柱をつくる骨のことであるが、同時に脊柱を指すこともある。脊柱はいわゆる背骨で、骨と軟骨で中の脊髄を保護している。脊髄は脊柱の中を通っている神経の束で、頭部で膨らんで脳となる。

b.原索動物(げんさくどうぶつ)

 脊椎動物の一番原始的な姿を連想させるのが、原索動物である。脊椎ではないが、脊索という支持器官が背中の神経管と平行に走っている。脊椎動物では、脊索はその周囲にできる脊椎や軟骨に取り囲まれて、脊柱内に痕跡として残っているのにすぎなくなる。

 原索動物としては、ナメクジウオやホヤがいる。このような原索動物の化石は、カンブリア紀(5億4200万年前〜4億8800年前)のバージェス頁岩(けつがん)から、ナメクジウオによく似ているビカイアというものが出てくる。中国からは先カンブリア時代(5億4200万年前以前)から、ナメクジウオやホヤの仲間の原索動物と思われる化石も報告されている。

 ナメクジウオはウオとあるが、魚類とはまったく違う、簡単な体のつくりをしている。脊索に沿って神経の束はあるが、脳はないといっていいくらいである。心臓もなくひれもない。目・鼻・耳といった感覚器官もない。しかし、体中に光を感じる器官(光受容器)があって、光には敏感である。日本の一部の生息地(愛知県蒲郡大島、広島県有竜島)では、天然記念物に指定されている。

 ホヤ(海鞘)は成長すると固着生活に入って動物らしく見えないが(海のパイナップルともいわれる)、幼生はオタマジャクシのような形をしている。尾の方に脊索がある。頭部にある突起で海底の岩などに固着して変態する。雌雄同体である。

 脊椎動物への進化の道のりについてはこちらを参照

ナメクジウオ
http://www.vialattea.net/esperti/php/risposta.php?num=8928
ホヤの幼生:神戸大学大学院医学系研究科脳科学講座神経発生学分野
http://www.med.kobe-u.ac.jp/anato1/hoya.html

戻る  このページのトップへ  目次へ  home

c.魚類

 魚類は水中に住む脊椎動物である。

 一番原始的な魚類は顎(あご)がない無顎類(むがくるい)である。無顎類は古生代初期のカンブリア紀の後期、5億2000万年前〜5億500万年前ころに、浅い海で登場したと考えられている。デボン紀(4億1600万年前〜3億5900万年前)までには、顎のある有顎魚類(板皮類、棘魚類、軟骨魚類、硬骨魚類)のすべてが登場した。このデボン紀は他の脊椎動物がまだ登場していなかったので、魚類が大繁栄して「魚類の時代」といわれている。

c−1 無顎類(むがくるい)

 顎(あご)がなく丸い口をしているので円口類ともいう。現在の無顎類はメクラウナギとヤツメウナギである。丸い口で魚にとりつき肉や体液を吸い取るので、漁業被害を起こすこともある。まだ骨(硬骨)はなく、軟骨で脊柱をつくる。ヤツメウナギはえらの孔が7対あるので、その名が付いた。また、その名から食べると目にいいといわれてきたが、実際にもビタミンAの含有量が多いことがわかっている。

ヤツメウナギ、7対のエラ孔(鰓孔)がよく見える。北海道開発局旭川河川事務所
http://kasen.eolas-net.ne.jp/suisei/sui_tz05.html
ヤツメウナギの丸い口:やつめ屋西村のホームページ
http://www1.cts.ne.jp/~nisimura/yatumeunagi.htm

c−2 板皮類(ばんぴるい)

 シルル紀後期(約4億年前)ころに登場した。体が装甲で覆われている。すでに顎はある。普通は小型であるが、なかには8mを超える(一説では12mに達する)ダンクレオステウス(恐魚)というものもいた。装甲のために防御能力に優れていると思われるが、運動性は低かっただろう。デボン紀の末(約3億6000万年前)に絶滅するまで、当時の海や川で繁栄した(ふだんは海に住み、産卵の時に川に移ったともいう)。

c−3 棘魚類(きょくぎょるい)

 シルル紀(4億4400万年前〜4億1600万年前)に登場した。顎があるものとしては板皮類より古いかもしれない。背側と腹側に棘(とげ)がある。棘魚類には内骨格があったらしい。こうしたことからも、棘魚類はその後の魚類の祖先とも見なされている。二畳紀の末(2億4500万年前)には、板皮類とともに絶滅する。


棘魚類の仲間アカントーデス・グラキリスの化石:群馬県立自然史博物館
http://www.gmnh.pref.gunma.jp/storageo/YA00001526/page_YA00001526.html

c−4 軟骨魚類

 サメやエイの仲間である。デボン紀(4億1600万年前〜3億5900万年前)の中期にはそれらしきものの化石が、デボン紀の中期にははっきりとそれとわかる化石が出てくる。体の中心の骨は軟骨である。

 体内受精をする、一部は胎生である(卵黄嚢胎盤ができ胎児に栄養分を送る)など、硬骨魚類よりもほ乳類に近い側面もある。

c−5 硬骨魚類(硬骨魚綱)

 硬骨魚類の祖先ははっきりとはわかっていない。約4億年前に登場したらしい。硬骨魚類(硬骨魚綱)は、肺魚類(肺魚亜綱)、総鰭類(そうきるい、総鰭亜綱)、条鰭類(じょうきるい、条鰭亜綱)に分けられる。

 肺魚類デボン紀(4億1600万年前〜3億5900万年前)、石炭紀(3億5900万年前〜2億9900万年前)、ペルム紀二畳紀)(2億9900万年前〜2億5100万年前)に大繁栄をするが、現在では南半球に細々と生き残っているのにすぎない。その名の通り、肺を持ち空気呼吸をする。肺魚の中には、乾期には分泌液で「まゆ」をつくり、その中で長期間休眠するものもいる。

 総鰭類も肺魚類と同じ頃に繁栄した。生きている化石として名高いシーラカンスは、総鰭類に属する。総鰭類では、鰭(ひれ)が肉質で、この鰭を使って海底を歩くこともできる。なお、肺魚類の鰭も肉質である。

 両生類へは、肺魚類、総鰭類のどちらから別れていったのかはよくわかっていない。

シーラカンスの化石:奇石博物館
http://www.kiseki-jp.com/japanese/stone-information/
collection/collections/coelacanth.html
現生のシーラカンスの剥製:横浜こども科学館
http://www.ysc.go.jp/ysc/info/news/news76-1.html

 条鰭類(じょうきるい)の鰭(ひれ)には、肺魚類や総鰭類のような肉質の部分はない。体を覆う鱗(うろこ)も軽くなっている。

 条鰭類の中ではチョウザメの仲間がもっとも原始的だといわれている。チョウザメはサメといっても硬骨魚類ではあるが、まだ内骨格の多くは軟骨である。また、サメのように上下非対称の尾びれをもっている。なお、キャビアはチョウザメの卵を加工したものである。この仲間はデボン紀(4億1600万年前〜3億5900万年前)の初めころに登場し、中生代(2億5100万年前〜6550万年前)前半に繁栄した。

 さらにアミアやガーパイクの仲間が登場する。骨格のほとんどが硬骨となる。鰾(うきぶくろ)は肺としても機能する。二畳紀(2億9500万年前〜2億4500万年前)に出現し、中生代に繁栄する。

 今日もっとも繁栄しているのが、真骨魚類である。骨は硬質化し、鱗は軽量化、鰾(うきぶくろ)も完成している。 真骨魚類は白亜紀(1億4500万年前〜6550万年前)に登場した。

チョウザメの一種アムールチョウザメ、尾が上下非対称であることがよくわかる。島根県立しまね海洋館
http://www.aquas.or.jp/database/db/amulchou.html
真骨魚のイワナ:琵琶湖博物館
http://www.lbm.go.jp/emuseum/tour/aquarium/aq0303.html

 なお、生物の厳密な分類方法は下を参照

戻る  このページのトップへ  目次へ  home


用語と補足説明

脊椎動物への進化京都大学や国立遺伝学研究所も参加した国際的なナメクジウオのゲノム(遺伝子のセット)解読プロジェクトの結果、脊椎動物の直接的な祖先はナメクジウオのような頭索動物(脊索動物門頭索動物亜門、脊索が頭まで伸びている)で、ホヤのような尾索動物(脊索動物門尾索動物亜門、幼生の尾に脊索がある)は頭索動物から脊椎動物への進化の過程で別れたものということが明らかになった(2008年6月19日)。この件については、国立遺伝学研究所のサイトを参照。生物の分類については下を参照

戻る  このページのトップへ  目次へ  home

硬骨と軟骨硬骨は脊椎動物の硬い骨で、骨細胞と石灰を沈着した骨質からなる。軟骨は硬骨よりもやわらかく、弾力性がある。軟骨は軟骨細胞、細胞間質の軟骨基質、軟骨をつつむ軟骨膜で構成される。球状の軟骨細胞が、コラーゲン原線維( タンパク質の一種)からなるゼリー状の軟骨基質の中に埋めこまれている。

骨の意義もちろん体を支え、運動能力を高めるという重要な役割を果たしている。それともう一つ、体の中でのカルシウムイオン(Ca2+)の濃度調節の役割も果たしている。体液中のCa2+が足りなくなれば骨の一部を溶かすことによって供給され、体液中のがCa2+過剰になれば骨として沈着する。Ca2+は、代謝機能や筋肉の収縮、情報伝達などの重要な役割を果たしている。

 カルシウムは骨の中ではリン酸カルシウム(Ca8H2(PO4)6)の形をとることが多い。一方貝殻などでは炭酸カルシウム(CaCO3)の形になっている。なお、植物でもカルシウムイオンは重要で、シュウ酸石灰石(CaC2O4・H2O)という形で貯蔵されている。

戻る  このページのトップへ  目次へ  home

シーラカンス古生代のデボン紀の約4億年前に登場する。世界中から化石が出るが、6550万年前以降からは化石が出なくなるので、そのころに絶滅したと考えられていた。ところが、1938年に偶然、アフリカの東南沖のトロールに引っかかった。その後、アフリカの東南海岸、アフリカ大陸とマダガスカル島の間にあるコモロ諸島で捕獲されるようになった。また、1998年にはインドネシア東部のスラウェシ島(セレベス島)でも捕獲された。

 ※ 1938年以前にも、地元の人たちの間ではその存在は知られていたようである。また、学名ラティメリアは、1938年のシーラカンス捕獲のさい、それを報告した東ロンドン博物館の学芸員(女性)の名前である。

戻る  このページのトップへ  目次へ  home

生物の分類生物のグループは大きな分け方から細かい分け方へ、ドメイン→界→門→綱→目→科→属→種というように、分類が階級化(階層化)されている。

戻る  このページのトップへ  目次へ  home


このページの参考になるサイト

岐阜大学教育学部地学教室全地球史:http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/e-history/html_/eh/index.html

戻る  このページのトップへ 目次へ  home