第二部−2− 地球の科学

第7章 火山(2)

目次
6. 火山の分布
a. 世界
b. 日本
用語と補足説明
この章の参考になるサイト

6. 火山の分布

a. 世界

 世界の火山分布を下に示す。だいたい地震の分布と一致していることがわかる。とくに太平洋を取り巻く地域に多い。

 この図には現れていないが、海嶺では大量のマグマが噴出していると考えられている。海嶺は海底から数千m盛り上がっているが、それでも水深数千mのところにあるので、噴火の現場を直接見ることはできない。しかし、海底で溶岩が流出した証拠である枕状溶岩が大量に見つかっている。枕状溶岩は、流れやすい玄武岩質溶岩が海中で流れるときにできる。冷たい海水に触れた溶岩の表面はすぐにかたまり薄い皮をつくるが、内部から次から次に押し出してくる溶岩がその薄い皮を突き破り流れ出し、そこでまた薄い皮を作りということが繰り返されて、枕を積み重ねたような構造になる。数千mの深海では数百気圧の水圧がかかっているので、マグマの噴出・噴火といっても爆発はせずに、静かに溶岩を流すだけである。

 中央海嶺や海溝近くでは熱水(場合によっては350℃くらい、水圧がかかっているので沸騰しない)の噴出がしばしば見られる(下右写真参照)。高温の熱水が深海の冷たい海水によって急冷し、溶かし込んでいた金属を析出している。それが黒い煙のように見えるのでブラック・スモーカーと呼ばれる。白っぽいホワイト・スモーカーというものもある。析出した金属は将来金属鉱床となるであろう。じっさい、日本で黒鉱と呼ばれている鉱床は、かつての海底のこのようなものが起源であろうと考えられている。


ネットで百科(日立システムアンドサービス社)。赤色の線はプレートの境界。
http://www.kn-concierge.com/netencyhome/

中央海嶺の枕状溶岩:下記のサイトでは枕状溶岩ができる様子のビデオ画像を見ることができる。
http://www.pmel.noaa.gov/vents/nemo/explorer/concepts/pillows.html
中央海嶺の熱水の噴出、ブラック・スモーカー。
http://www.amnh.org/nationalcenter/
expeditions/blacksmokers/smoker1.html

 なお、ハワイなどのように火山帯とは離れた場所にも大規模な火山群がいくつか見られる。これは、マントルのかなり深いところ(リソスフェアよりも深いところ)に、マグマの供給源があると思われる。こうした場所をホットスポットという。ホットスポットの上ではマグマがたくさん供給されるために、火山の活動が盛んである。しかし、プレート(リソスフェア)の動きとともにその火山はホットスポットの上からずれていく。すると、火山活動は衰えていく。そしてさらに離れると火山活動を起こさなくなり、火山体はどんどんと侵食されていく。

 こうした様子はハワイ諸島でその典型を見ることができる。現在ホットスポットの真上にあるのはハワイ島である。ハワイ諸島で活発な火山活動が行われているのはこのハワイ島だけである。ハワイ島には標高4000mを超える火山が2つある。海底からは9000mという高さの巨大火山である。ハワイ島から北西に向かって並んでいるハワイ諸島は、南東から北西に向かってだんだんと古い火山となっている。この火山島の列は、北西の古い火山ほど侵食されている。ハワイ島の中だけを見ても、日本の“すばる”をはじめ、世界各国の巨大望遠鏡が建設されたマウナ・ケア(頂上部はかなり侵食が進んでいるは)ほぼ活動が終わり(だから巨大望遠鏡を建設できる)、その南にあり、まだきれいな形を保っているマウナ・ロアは明治時代には頂上の溶岩湖があり、最新では1984年に噴火している。現在活発な火山活動をしているのはさらに南のキラウエア火山である。じつは、さらにキラウエア火山の南の海中に活発な海底火山(ロイヒ海底火山)があり、ここがホットスポットの本当の真上らしい。

 また、海嶺から離れるほど冷えて密度の増したプレート(リソスフェア)は、全体としてゆっくりゆっくりと沈んでいくので(海底がだんだん深くなるので)、やがては頂上部分だけがかろうじて海面に顔を出すだけになり(ミッドウェーなど)、さらにプレートが沈み込んでいくとその侵食されて広くなった頂上部も沈んで、頂上部の平らな平頂海山(ギョー)となる。これらのギョーはミッドウェーからさらに北西に連なり、桓武海山(かんむかいざん、約4000万年前の火山)で急に北北西に向きを変え、カムチャッカ半島の付け根の明治海山(約7000万年前)まで続いている。4000万年前に、プレートの運動の向きが急に変わったらしい。

ホットスポット上のハワイ諸島。
USGS:http://pubs.usgs.gov/publications/text/hotspots.html
左:ハワイ諸島の断面図 右:ハワイ諸島を上から見た図(ハワイ島からカウアイ島に向かって古くなっていく。
USGS:http://pubs.usgs.gov/publications/text/hotspots.html
ハワイ諸島の地下構造の地震波CT。。地震波CTの作成はhttp://csmap.jamstec.go.jp/を利用し、地球モデルはS40RTSを使った。
Ritsema, J., Deuss, A., van Heijst, H. J., and Woodhouse, J. H. (2011). S40RTS: a degree-40 shear-velocity model for the mantle from new Rayleigh wave dispersion, teleseismic traveltime and normal-mode splitting function measurements. Geophysical Journal International 184: 1223-1236. (doi: 10.1111/j.1365-246X.2010.04884.x)

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b. 日本

 日本付近には、世界の活火山のうちの約10%の活火山がある。

 地球的規模では火山の分布と地震の分布は同じようである。しかし、日本なら日本という限られた地域で見るとそれらは少しずれていることがわかる。具体的には、海溝(の軸)−地震帯(浅い地震の震源が分布しているところ)−火山帯とすこしずつずれながら平行に走っている。そして、火山はこの線よりも海溝側には火山がないという線が明瞭に引ける。この線のことを火山フロント(火山前線)という。これは日本だけではなく、海溝付近の地震帯、火山帯に共通にいえることである。

 火山は火山フロントの近くに多く、離れるに従って数が少なくなる。火山フロントは和達−ベニオス帯(深発地震面)の深さが120km〜130km程度の所に対応している。またマグマの化学組成も、火山フロントからの距離によって異なることが知られている。火山フロントに近い火山のマグマ中には相対的に二酸化ケイ素(SiO2)の割合が多く、ナトリウム(Na)やカリウム(K)が少ない。離れるに従ってSiO2が少なくなり、NaやKが多くなる。こうしたことは、火山フロントに近いものから遠いものになるに従い、マグマの発生する深さがだんだんと深くなるためであると考えられている。つまり、和達−ベニオス面が海溝から離れる従い深くなることと、深く関係していることを示唆している。これについてはこちらを参照

 なお、かつて使われていた鳥海火山帯とか那須火山帯などという細かい区分は使われていない。せいぜい東日本火山帯(東北日本火山帯)、西日本火山帯(西南日本火山帯)という程度である。


日本の第四紀火山分布(日本火山学会)に火山フロントを加筆
http://www.geo.chs.nihon-u.ac.jp/tchiba/volcano/index.htm

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用語と補足説明

ブラック・スモーカーブラック・スモーカーのまわりには太陽エネルギーに依存しない不思議な生態系が存在する。ふつうの生態系の基礎となるのは太陽エネルギーで、そのエネルギーを植物が光合成によって固定する、その固定されたエネルギーを他の生物が利用するという形である。光合成は、水+二酸化炭素+太陽エネルギー→デンプン+酸素という形である。この逆反応、デンプン+酸素→水+二酸化炭素+エネルギー、つまり食べたデンプンを酸素を使って分解しエネルギーを得て、水(尿)と二酸化炭素を排出する。

 ところが、ブラック・スモーカーのまわりでは、噴出する熱水のエネルギーと熱水に含まれている硫化物(硫化水素など)やメタンから有機物を合成するバクテリアがいて、そのバクテリアを基礎とする生物群が生活している。例えば下左写真のチューブ・ワーム(ハオリムシ)は体内にイオウバクテリアを共生させて、それが合成する有機物を栄養源としている。このために消化器官を欠いている。下写真右のシロウリガイもそうしたイオウバクテリアを共生させている。チューブ・ワームやシロウリガイには、こうした生物には珍しく血液中にヘモグロビンがあるので、体が赤く見えている。

 こうしたブラック・スモーカーのまわりの生物群が注目されるのは、生命もこのような場所で発生したかもしれないと考えられているからである。

チューブ・ワーム(長さ1.5m程度)
アメリカ地質調査所
http://pubs.usgs.gov/publications/text/tube_worms.html
シロウリガイを採集するアメリカの潜水調査艇アルヴィン号。大きさは20cm〜30cm程度。アメリカ地質調査所
http://pubs.usgs.gov/publications/text/Alvin_arm.html

黒鉱海底で噴出した熱水から沈殿した硫化物(イオウ化合物)がつくる鉱床。具体的には黄銅鉱、黄鉄鉱、方鉛鉱、閃亜鉛鉱、さらには金や銀などの鉱物を含む。色が黒っぽいので黒鉱と呼ばれる。成因の詳細は、下写真のオリジナルサイト参照。秋田県の小坂鉱山、花岡鉱山などが代表であるが、経済状況から閉山(操業停止)に追い込まれてしまった。


黒鉱:東京大学コレクションII「動く大地とその生物」から。
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/publish_db/1995collection2/tenji_ganseki_02.html

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ギョー(平頂上海山):比較的平坦な頂を持ち、深海底から1,000m以上の高さがある海山。19世紀の地理学者Guyotにちなんで、H.ヘス(アメリカ、1906年〜1969年)が命名。当時は成因が不明だった。現在では、ホットスポット上の火山が、プレートの運動によりホットスポットから離れると火山活動ができなくなり、侵食作用によって頂上部が削られていく。そうして頂上部が平になった火山島が、それを載せている海洋底がだんだん深くなるに従い、海面下に没してできると考えられている。

 なお、暖かい海域で火山島のまわりにサンゴ礁ができていると、火山島が沈み込んでも(ギョーの形成)、サンゴ礁の成長が十分速ければ、サンゴ礁は海面下に没することなく、つねに上の部分は海面すれすれの状態を維持できる。こうしてできるサンゴ礁は、かつての島のまわりのサンゴ礁だけが海面上につねに残って丸いドーナツ状の環礁となる。

 
海嶺から遠ざかる(古くなる)ほど、海底の深さが増す。
http://earthsci.org/education/teacher/basicgeol/platec/platec.html

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天皇海山列ミッドウェー諸島から海面下に没したかつての火山は、ギョーとなる。当時軍人だったH.ヘス(アメリカ、1906年〜1969年)は、(軍事的な目的で)海底の測量を行っていて、これらのギョーを発見した(1942年)。そしてこれらのギョーに、1954年アメリカの地質学者ディーツが日本の歴代の天皇の名前を付けた。アメリカ人のユーモアというか余裕の表れというか。ただし、ギョーの列順は天皇の歴代順にはなっていない。これらの海山列を天皇海山列、あるいはハワイ諸島を併せて天皇−ハワイ海山列という。

天皇海山列とハワイ海山列(数字は火山が活動した年代)

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ヘスハリー・ヘス(Herry.H.Hess、アメリカ、1906年〜1969年)。第2次世界大戦中は海軍の軍人、退役してあとプリンストン大学の地質学教授となる。戦時中から太平洋の海底の調査・研究を行っていた。ギョーの発見(1942年、命名は1947年)や海洋底拡大説の提唱者として知られている。


H.H.ヘス
http://pubs.usgs.gov/publications/text/HHH.html

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この章の参考となるサイト

火山学者にきいてみよう(日本火山学会):http://hakone.eri.u-tokyo.ac.jp/kazan/Question/br/qa-frame.html

フィールド火山学(群馬大学早川由起夫氏):http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~hayakawa/kazan/field/index.html

日本の第四紀火山(日本火山学会):http://www.geo.chs.nihon-u.ac.jp/tchiba/volcano/index.htm

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