第二部−3− 大気と海の科学

第4章 気圧と風

目次
1. 高気圧と低気圧
2. 気圧と風
3. 風向と風速
4. 風を起こす力
5. 上空を吹く風(1) 地衡風
6. 上空を吹く風(2) 傾度風
7. 地上を吹く風
8. 高気圧・低気圧と風
用語と補足説明

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1.高気圧と低気圧

 海面更正をした後でも、気圧は測定した場所や測定した時刻によって異なる。ある同じ時刻で測定した気圧を海面更正して、気圧の等しい地点を結んだ線を等圧線という。等圧線は地形図の等高線と同じで、交差したり分岐したりすることはない。実際の天気図上での等圧線の引き方はこちらを参照

 等圧線と引いていくと閉じた輪になるところができる。その中心に行くほどまわりより気圧が高くなったいるところが高気圧、その中心に行くほどまわりよりも気圧が低くなっていれば低気圧である。高気圧や低気圧は単純にまわりより気圧が高いか低いかで決まり、1気圧(1atm=1013hPa)よりも気圧が高いか低いかということではない。

 高気圧と低気圧についてはこちらも参照

 また気圧の低い低圧部と低圧部の間の気圧の高いところを気圧の尾根、高圧部と高圧部の間の気圧の低いところを気圧の谷という。

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2.気圧と風

 気圧は空気の重さであった。だから、気圧が高いということはその場所で上にずっとのばした空気の柱の中の空気が多い(から重い)、気圧が低いということはその場所の空気の柱の中の空気が少ない(から軽い)ということになる。そこで、空気が多い気圧の高いところから、空気が少ない気圧の低いところに空気が流れることになる。これが風である。だから、風は気圧の高いところ(高気圧)から低いところ(低気圧)に向かって吹くことになる。ただし、実際の風は地球の自転の影響、地表との摩擦があるので、気圧の高いところから低いところに向かってまっすぐに吹いているわけではない。

 

3.風向と風速

 風が吹いてきた方向を風向という。風向が北(北風)とは北から南に向かって吹く風のことである。風向はふつう16方位(南南東とか西北西まで)で表す。風速は10間の平均値をとり、秒速何mで表す。瞬間的な風速は「瞬間風速」ときちんと表現する。

 天気図上では風速ではなく、風速により0〜12までの段階に分けられた風速の尺度である風力を用いる。

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4.風を起こす力

 気圧の差によって生ずる風を起こす力を気圧傾度力という。気圧傾度力は、気圧を測定した二点間の距離が一定ならば気圧の差が大きいほど大きく、その二点間の気圧の差に比例する。また、気圧の差が一定ならば、二点間の距離が短いほど大きく、距離に反比例する。天気図上では等圧線の間隔が狭いところほど、風を起こす力が強く働いていることになり、強い風が吹いている。

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5.上空を吹く風(1) 地衡風(ちこうふう)

 上空で気圧の差が生ずると、気圧の高い方から低い方に向かって気圧傾度力がはたらくので、空気塊はまずその向きに沿って動き出す。等高度線(地上の等圧線に相当)が等間隔で平行ならば、この気圧傾度力はどこでも一定である。気圧傾度力しかはたらかないとすると、空気塊は等高度線に対して直角に、気圧の高い方から低い方に動く(風は気圧の高い方から低い方に吹く)ことになる。

 しかし、動き出した空気塊に対しては、北半球ではその進行方向に向かって右向きのコリオリの力(転向力)が働く。コリオリの力は進行方向に直角右向き、また空気塊の速さに比例する。こうして気圧傾度力によって空気塊はだんだん加速されていくが、加速されるとそれに比例してコリオリの力もだんだん強くなる。こうして空気塊はだんだん右に曲がりながら加速されることになる。最終的には、気圧傾度力とコリオリの力が正反対の向きになって、空気塊に働く力がつり合うようになる。するとこの空気塊はこれ以上は加速もされない、また向きも変えない安定した風となる。これが地衡風である。

 このように上空で等圧線が平行に走っているときは、風は等圧線に平行に吹いている。もしその風を背中に受けることができるとしたら、左側が気圧の低い向きということになる。実際に上空で吹いている風はこちらを参照。

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6.上空を吹く風(2) 傾度風

 上空で等圧線が曲がって弧を描いていると、そこを吹く風は遠心力も考えなくてはならない。気圧傾度力コリオリの力、遠心力がつり合っている状態で吹く風を傾度風という。

 上空の低気圧のまわりで吹く風では、気圧傾度力に対してコリオリの力と遠心力の合力がつり合っている。上空の高気圧のまわりで吹く風では、気圧傾度力と遠心力の合力に対してコリオリの力がつり合っている。風を起こすもともとの力は気圧傾度力、コリオリの力は結果として風速に比例する力であることを考えると、気圧傾度が同じ、等高度線(等圧線に相当)の半径が同じならば、高気圧のまわり方が強い傾度風が吹くことになる。

 実際の傾度風についてはこちらを参照。


m:空気塊の質量  G:気圧傾度  ρ:空気塊の密度  V:風速
r:等高度線の円の半径  ω:地球の自転の角速度  φ:緯度  

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7.地上を吹く風

 地上を吹く風は、風(空気塊の動き)と地表との摩擦を考えなくてはならない。摩擦力は風を止めようと風向に逆向きにはたらく。気圧傾度力は高圧部から低圧部に向かってはたらき、コリオリの力は風向きに対してそれを直角右向きに曲げるようにはたらく。こうして、等圧線が平行なら、風は等圧線を斜めに横切るように、風を背中に受けると低圧部が斜め前に来るように吹く。等圧線が平行ならば、地上を吹く風は、気圧傾度力、コリオリの力、摩擦力の3力がつり合って安定した風となっている。

 等圧線を横切る角度は緯度や地表の様子によって異なる。日本付近では海上で20°くらい、陸上で30°くらいである。摩擦力(地形の凹凸)が大きいほど、この角度は大きくなる。

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8.高気圧・低気圧と風

 高気圧では中心から外側に向かって気圧傾度力がはたらき、低気圧では外側から中心に向かって気圧傾度力(下図のうす緑色の矢印)がはたらいている。しかし、地上を吹く風コリオリの力(下図のうす黄の矢印)と地表との摩擦力(下図のうす赤の矢印)により、等圧線を斜めに横切るように吹く。下図からもわかるように、北半球の高気圧から吹き出す風は右回り(時計回り)の風になり、低気圧に吹き込む風は左回り(反時計回り)の風となる。こうして低気圧に吹き込む風は、北半球では左巻きの渦となるのである。

 南半球ではコリオリの力は北半球とは逆に、運動している物体の進行方向に向かってそれを左に曲げようとして働く力になる。だらか、高気圧からは左回りに風が吹き出し、低気圧には右回りに風が吹き込むことになる。

 ただし、北半球ではどのような渦も左巻き。南半球では右巻きになるということではない。高気圧・低気圧のような大規模な現象での話である。この件についてはこちらを参照

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用語と補足説明

等高度線上空の天気図では等圧線ではなく、気圧の等しい(例えば500hPa)高度を結んで等高度線をかく。上空の天気図はこちらを参照。等高度線が閉じた輪になっているところで、まわりよりも高いところが上空の高気圧、まわりよりも引くところが上空の低気圧となる。

風力風速により下のように0〜12までのランクがある。なお、ノットとは1時間に1海里(1852メートル)の速度を1ノットという。1海里の1852メートルは緯度1分の長さに相当する。航空・船舶関係では便利なのでよく使われる単位である。1ノットは秒速0.5144mになる。

風力 相当風速(m/s) 相当風速(ノット) 備  考
0.0 から 0.3未満   1未満
0.3 以上 1.6未満 1以上 4未満
1.6 以上 3.4未満   4以上 7未満
3.4 以上 5.5未満   7以上 11未満
5.5 以上 8.0未満  11以上 17未満
8.0 以上 10.8未満  17以上 22未満
10.8 以上 13.9未満  22以上 28未満
13.9 以上 17.2未満  28以上 34未満 海上風警報に相当
17.2 以上 20.8未満  34以上 41未満 海上強風警報に相当
20.8 以上 24.5未満  41以上 48未満    〃
10 24.5 以上 28.5未満  48以上 56未満 海上暴風警報に相当
11 28.5 以上 32.7未満  56以上 64未満    〃
12 32.7 以上  64以上 海上暴風警報または海上台風警報に相当
 

気象庁風力階級表
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kansoku_guide/c4.htm

気圧傾度力いま、断面積がS、長さがlの空気塊を考える(下図)。この空気塊の左右の面で気圧の差があり、左側の面ではP、右側の面ではPという気圧になっているとする。

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地衡風の速さコリオリの力の大きさ(f)は、地球の自転の角速度(1秒間に何ラジアン自転するか)をω(オメガ、値は7.27×10-5rad・s-1)緯度φ(ファイ)、運動している物体の質量をm、速度をvとすると、f=2mvωsinφである。これが上で求めた気圧傾度力とつり合って吹くのが地衡風である。

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