第一部−2− 宇宙の科学

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第3章 太陽(6)
8.太陽の活動
a.太陽の自転
b.太陽の活動
用語と補足説明
参考になるサイト

第3章 太陽

8.太陽の活動

a.太陽の自転

 太陽の自転は黒点の動きからわかる。この黒点は、太陽が自転しているため東から西へ移動する。自転周期は緯度によって異なっていて、赤道付近が最も短く25日程度、緯度が高くなるにしたがって長くなり、極付近では31日程度となる。このように緯度によって自転周期が異なるのは、太陽は固体ではなくガス体だからである。緯度によって自転の速さが違うことによって、太陽の磁場が複雑に乱れ、一部は太陽内部から浮上した磁場に変形されて、黒点など様々な活動現象を示すようになる。

 国立天文台が編集している理科年表(丸善)では、太陽の自転周期の代表値は25.38日となっている。ただしこれは、対恒星自転周期(恒星を基準とした自転周期)で、地球は太陽の自転と同じ向きに太陽の周りを公転しているので、これを地球から見ると少し遅く見えて27.28日になる。これは会合周期、あるいは恒星日と太陽日恒星月と朔望月と同じことである。

 太陽の自転軸は地球の公転面に対して約7°傾いている。このため9月には太陽の北極側が、3月には南極側がよく見える。

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b.太陽の活動

 太陽は主系列星で非常に安定した状態にあり、その出力の増減はほとんどない。しかしそうはいっても、活動の波はあり、その代表が黒点の増減である。

 地球と同じように、太陽にも弱い磁場が存在するが、これとは別に黒点にはきわめて強力な磁場(地球の磁場の数千倍)が存在している。逆にいえば、周囲より低温である黒点が存在するのは、その強力な磁場が太陽中心からのエネルギーの流れを抑えているからと考えられている。黒点の項参照。

 黒点は、太陽内部で発生した磁場(磁力管)が浮上し,その光球面における断面と考えられている。だから、黒点はN極・S極の性質をもつものがペアとなっていて、前を行く黒点がN極ならば、後ろの黒点はS極になっている。


黒点の発生:「星と銀河の世界」(岩波書店)をもとに作成

 黒点の多さ、少なさを表すのが「黒点相対数」といわれるもので、1848年にスイス・チューリッヒ天文台のJ. R. ウォルフによって考案され、いまも使われている。黒点相対数は11年周期で増減している。前回は2000年〜2001年が極大期であったので、次回の極大期は2011年〜2012年ころと予想される。ただし、黒点がほとんど現れない時期が続くこともある。黒点の出現が極端に少なかった1650〜1700年はマウンダー極小期と呼ばれ、この時代の地球は寒冷化したことが知られてる。

       R=10g+f  (R:黒点相対数、g:群数、f:黒点総数)


黒点相対数の変化:CD-ROM版理科年表2004(丸善)

 黒点は南北両半球で同じ緯度に現れる傾向がある。この緯度は黒点周期の間に約45度から約5度まで移動する。したがって、黒点が出現した緯度を縦軸に、時間(年月日)を横軸にプロットすると、蝶が羽を広げたようなグラフが得られる。これを蝶型図と呼んでいる。


蝶型図:http://www.windows.ucar.edu/tour/link=/sun/images/butterfly_jpg_image.html

 黒点の数が多いということは、太陽の活動が活発であることを示す。じっさい、黒点付近で起こることが多いフレア(太陽面爆発)も黒点の数が多いときによく起こる。フレアに伴い、強いγ(ガンマ)線、X線、紫外線、荷電粒子(プラスの陽子・ヘリウム原子核、マイナスの電子)が放出される。これが地球にぶつかると、デリンジャー現象磁気嵐オーロラというような現象を引き起こす。

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用語と補足説明

11年周期太陽の北半球にある黒点のペアでは、自転の方向で前を行くの黒点は、南半球の前を行く黒点とは磁場の向きが反対になっている。新しい11年の周期がはじまると、それぞれの半球での前を行く黒点は磁場のが反対になる。したがって、磁場の極性まで考えると、太陽の活動周期は約22年ということになる。

デリンジャー現象フレアによって放出されたγ線、X線、荷電粒子が地球の電離層を乱し、電離層を利用した遠距離の短波帯通信が、太陽に照らされている地球の半面において乱される現象。

磁気嵐:フレアによって放出された荷電粒子が、地磁気のために進路が曲げられ、北極と南極付近に集まって環状の流れとなり(つまり環状の電流となり)、これによって生じる磁場がもともとの地球磁場を乱す現象。磁気コンパス(方位磁石)が示す方向が狂ってしまう。磁気嵐はX線など光速で伝わるものよりは遅い荷電粒子が引き起こすので(地球付近では、ふつうは500km・s-1程度の速さだが、フレアのときは2000km・s-1を越えることがある)、フレアの1日半後くらいに起こる。つまり、フレアを観測していれば予報できる。下の宇宙天気ニュース参照。

宇宙天気ニュース情報通信研究機構宇宙天気システムグループでは、太陽フレア、磁気嵐、オーロラ活動など、「宇宙天気ニュース」を公開している。

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