第二部−1− 地球の歴史

第2章 地球の誕生

目次
1. 地球の誕生
用語と補足説明
この章の参考になるサイト

1. 地球の誕生

 原始太陽系星雲の中で、微惑星の衝突・合体により惑星が誕生する。地球の位置では岩石(ケイ酸塩と金属)主体の塵(ダスト)から微惑星がつくられているので、原始地球も岩石(ケイ酸塩と金属が入り混じった状態)で成り立っている。しかし大きくなってきた原始地球に次から次へと微惑星が衝突すると、そのエネルギーは熱となって原始地球を温める。最初はその熱は宇宙にどんどんと放出されるが、衝突により微惑星に含まれていた気体になりやすい成分(揮発成分という、H2Oが主成分)が抜けて(脱ガスという)表面にたまってくる。この水蒸気の温室効果により、微惑星の衝突で発生した熱が宇宙に放射されずにこもるようになる。このようにして原始地球の表面の温度は岩石の融点を超え、表面全体がマグマになってしまう。マグマオーシャン(マグマの海)の誕生である。マグマオーシャンの深さは少なくとも数100kmにもなったらしい。

 マグマオーシャンの中では、密度の大きな鉄(や金属)は下に沈み、金属よりも密度の小さな岩石は上に浮いてくる。こうした運動のために(位置のエネルギーが解放されて)さらに熱が発生し、原始地球内部はさらに熱せられて核とマントルの分離は極めて短時間に(カタストロフィックに)起きることになる。

 現在ではさらに、地球誕生時のごく初期の段階で、火星大の別の原始惑星の大衝突(ジャイアント・インパクト、実際にはかすめる形で衝突)があったとも思われている。このジャイアント・インパクトは月を誕生させることにもなる。月はこのときにはぎ取られた原始地球のマントル物質と、衝突した別の原始惑星のこれまたはぎ取られたマントル物質の混合物が再び集積してできたらしい。このように考えると、太陽から同じ距離、つまり同じ材料(ダスト→微惑星)が存在していた所に誕生した地球と月の組成の違い(月には大きな金属核がない)ということがうまく説明できる。このときに融けた原始月の表面に浮いた密度の小さい斜長岩マグマが、現在の月の地殻(月の高地)になったと考えられている。

 いずれにしても、このジャイアント・インパクトの衝撃で地球全体が融けて、それまでの歴史がリセットされるし、このことによっても核とマントルの分離が起こることになる。逆に岩石となじみやすいNa(ナトリウム)、Al(アルミニウム)、Si(ケイ素)、Cl(塩素)、K(カリウム)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、U(ウラン)などはマントル(さらに地殻)に多く残ったと考えられる。

 

 微惑星の集積の終わり頃になると、炭素質コンドライトがたくさん衝突した可能性がある。またマグマオーシャンの固結に伴い、H2O(水蒸気)、CO2(二酸化炭素)、Ar(アルゴン)、Xe(キセノン)などの揮発成分が脱ガスして、地球の表面にたまり出す。これらは海洋・大気になる。大気と海洋の起源についてはこちらも参照

 こうして地球はほぼ45〜46億年前に誕生したと考えられている。なぜ、45〜46億年前ということがわかるのかはこちらを参照

 その後はまだ続く巨大いん石(残った微惑星)の衝突と、高温のマントルの激しい対流により、固体地球の表面を最初におおった岩石は再び融けてしまい、現在は残っていないと考えられている。だが少なくとも40億年くらい前からは、現在の地球と同じような状態(下(e)図)になったと考えられている。地球の表面の多くは海におおわれ、海洋地殻(玄武岩質)は海嶺で生産され、海溝で再びマントル中に潜り込む。その海溝(沈み込み帯、多くは大陸の縁にある)付近での火成活動により大陸地殻(花こう岩質)もできる。これらについては、火成活動やプレート・テクトニクスプルーム・テクトニクス)を参照。

※ このページの図は、「地球惑星科学入門」(岩波地球惑星科学講座1、1996年)の図3.5をもとにした。

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用語と補足説明

核とマントルの集積原始太陽系星雲が冷えるのに従い塵(ダスト)が凝縮するときは、当然凝縮温度が高いものから凝縮を始める。ここが大変微妙なところで、100Pa(Pa(パスカル)は圧力の単位、1Pa=1N・m-2、1気圧≒10万Pa、100Pa=1hPa(ヘクトパスカル)、地球ではだいたい上空50kmくらいの大気圧に相当)における金属鉄の凝縮温度は1473Kであり、かんらん石の一種フォーステライトは1444K、長石の一種アノーサイトは1362Kである。だから、原始太陽系星雲の冷え方がごくゆっくりゆっくりなら、まず鉄(地球の核の主成分)を主体とするダストが凝縮し鉄の微惑星ができ、それが衝突合体して原始惑星(原始地球)をつくる。ついで、かんらん石(マントルをつくっているかんらん岩の主要構成鉱物)や長石(多くの岩石に含まれている鉱物)が凝縮して岩石の微惑星ができ、すでにできている鉄の原始惑星のまわりに岩石の微惑星が衝突・合体して原始地球が成長する。つまり、地球の誕生時にはすでに、金属核とそのまわりのマントルという構造ができていることになる。

 ただし、現在では原始太陽系星雲の冷え方はそれほどゆっくりとしたものではないと考えられている。だから、原始地球は鉄のダストと岩石のダストが混在している状態から、つまり鉄の微惑星と岩石の微惑星が混在して、お互いが衝突・合体してできたと思われている。つまり、地球誕生後に核とマントルが分離したと考えられている。

 しかし、同じ地球型惑星でも太陽に近い惑星ほど金属核の相対的な大きさ(惑星の大きさに対する大きさ、とくに水星の核は大きい)が大きい。これは、太陽に近いほど温度が高いので金属の延性(力が加えられたときに破壊されずに引き延ばされる性質)の効果が強く現れて岩石よりも集積しやすかったからだという不均一集積説もある。

 いずれにしても、核とマントルの分離は地球の歴史のごく初期の段階に起きたことになる。

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この章の参考となるサイト

東京大学理学部地球惑星物理学科:http://www.eps.s.u-tokyo.ac.jp/jp/gakubu/geoph/space/

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